紀行文 ブログトップ

大峯山詣り [紀行文]

しばらく以前になりますが、去年の6月から開設した本ブログの累計アクセス数が1万を突破しました!遅々とした更新にも関わらず、日頃お目通しを頂いている皆様に、改めて御礼申し上げます。

***

お盆に関西方面に帰省したのを機会に、奈良県天川村の大峯山(山上ヶ岳;標高1719m)にお詣りしてきました。この山のしきたりでは、山にのぼるのは、「登山」ではなく、「お詣り」です。ご存じの方も多いと思いますが、山伏の山岳修行の場であり、今でも女人禁制となっています。私が登った日も、白い行者装束の人々が多く、山上にある大峯山寺に参詣する人が絶えませんでした。すれ違う人々は皆、「ようお詣り」と挨拶するならわしです。行者さんたちのグループは、「さーんげさんげ(懺悔 懺悔)、ろっこんしょーじょー(六根清浄)、お山はしょーじょー・・・」などと詠唱しながら、テンポよく上がっていきます。法螺貝のブォーという音が、遠く近く響いてきます。

DSC01460_2.jpg

登り口からしばらくは植林が続きますが、それを抜けると、ミズナラなどの落葉広葉樹が沿道に現れます。ちょうどリョウブの白い花が盛りと咲いていました。途中の茶屋に立ち寄り、吉野名産の葛湯で一息入れ、稜線に出ると、下界の猛暑とは対照的に、吹き抜ける冷涼な風が心地よく、緩やかな稜線の道の両側には、ブナ、ナナカマド、オオカメノキなど、関西地方の下界とは様相の異なるブナ帯の樹種が立ち並び、柔らかな緑色が目を楽しませてくれました。さらに進むと、ブナ帯の上部から常緑針葉樹林帯の下部を分布域とするウラジロモミ。このような道中のところどころに、「鐘掛岩」や「西の覗き」など、有名な修行の岩場があります。

DSC01401.JPG
〔鐘掛岩〕
手足をかけるところを1つ間違えると身動きがとれなくなり、行者さんの指導なしには登るのが難しいという岩の壁です。この日も行者さんの指導で小学生ぐらいの男の子が上っていきました。

DSC01461.JPG
〔西の覗き〕
ロープ一本で断崖絶壁から突き出されます。案内人が読経の後、「嫁さんと子供を大事にすると不動明王様に誓うか!」等と喝を入れます。

DSC01447.JPG
〔西の覗き〕
西の覗きを横から見るとこんな感じです。この崖の上から吊されます・・

この大峯山を核として、吉野から熊野に至る修験道の修行ルートは、「大峯奥駈道」と呼ばれ、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界文化遺産に認定されました。このように、人々の篤い信仰心に守られてきた山にも、生物多様性の危機は迫っているようです。近年は、やはりシカによる食害が問題になっており、大峯山系でも場所によっては、大台ヶ原一帯と同じように林床が食べ尽くされ、バイケイソウなどの有毒な不嗜好性植物だけが広がっているという異様な光景になっているようです。環境省や地元関係者により、植生回復やオオヤマレンゲ自生地の保護などが進められています。

今回の大峯山の登山ルートは、修行者が日夜上り下りするため、シカも人の気配を嫌ってあまり出てこないのか、沿道から見ている限りは、ひどい食害は目にしませんでしたが、ルートを外れた場所の状況までは分かりませんでした。植生などの自然環境が健全な状態で保たれてこそ、ありのままの自然を尊ぶ修験の場として、生きた価値を持ち続けることができるのではないか、そんな思いを抱きました。

DSC01471_c.jpg
〔役行者〕
沿道には、修験道の開祖で大峯山を開いた役行者の像や石碑類が多くみられます。この、どこかユーモラスな表情の役行者像に癒されました。

緑生研究所の詳細はコチラ
http://www.ryokusei-ri.co.jp/
緑生研究所は、日本経団連の生物多様性民間参画パートナーシップに参加しています。

担当:伊藤
紀行文 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。