こんなところから種子が出てくるなんて! [季節の話題]

外来種の増加は、既存の生態系をかく乱することから、生物多様性の危機の1つとして「生物多様性国家戦略2010」に位置付けられています。
ここ数年、さまざまな場所でオオキンケイギク(礫河原や海岸などの水辺環境を守るために、外来生物法で特定外来生物二次指定植物に指定されている)を調査する機会があり、毎年6月前後になると、オオキンケイギクを追いかけていました。外来種の増加を防ぐことを日々考えていたためか、急激に増えている外来種のナガミヒナゲシが気になり、今回はナガミヒナゲシを取り上げてみることにします。

ナガミヒナゲシ(Papaver duvium)は、地中海地方原産でアメリカやアジアに帰化している越年生草本で、1961年に東京で見出され、近年各地で道端や市街地に帰化しています(清水ら2001)。
繁殖の旺盛な植物は、“多産(種子を多くつける)”または、“栄養繁殖で増えることが可能”という戦略で増えますが、ナガミヒナゲシは前者で、たくさんの種子を結実して増えています。
ナガミヒナゲシが目につくようになってから、膨れた果実の中に、どれだけ種が入っているのか気になっていましたが、種子の量の多さと小ささを考えると、数えることにだいぶ躊躇していました。しかし、今年は意を決して、1果実あたりの種子の数を数えてみようと果実を採取してみました。

果実を持ち帰ってくると、今まで果実の最上部に1つの穴が開いて出てくるものと考えていた種子は、その少し下の側面の複数の出口から出てきていることに気づきました。結実時は、出口は開いておらず、種子が熟し果実が乾燥するにしたがい、門のような出口が広がり、熟した種子がこぼれ落ちるようになっています。
よくできたメカニズムですね。

ナガミヒナゲシ花Cjpg.jpg
ナガミヒナゲシ花(2011/5/25 東京都調布市)

ナガミヒナゲシ実現地で上から.jpg
ナガミヒナゲシ実 上から撮影(2011/5/25 東京都調布市)

実乾燥前.jpg
乾燥前のナガミヒナゲシ果実
実乾燥後.jpg
乾燥後のナガミヒナゲシ果実(赤矢印が種子の出口、白矢印は種子)

さて、この試みの発端である、種子の数ですが、面倒ながら数えてみました。
ナガミヒナゲシは生育条件によって植物体の大きさが極端に変化することも知られており(清水ら2001)、その果実の大きさは、植物体の大きさによって違っていることは見ためにも明らかでした。今回は、小さめ・大きめの2つの果実を青いうちにとって、乾燥させた後、1果実あたりの種子の数を数えてみました。
ナガミヒナゲシ種子C.jpg

・小さめの果実(乾燥時の果実サイズ:長径14mm、直径4mm) 1084粒
・大きめの果実(乾燥時の果実サイズ:長径20mm、直径8mm) 2608粒
サンプル数も少ないので、単なる目安ですが、あちらこちらに生えているナガミヒナゲシの果実それぞれに1000粒以上の種子が入っていて、ネズミ算のように増えていくとすると、ナガミヒナゲシが急増しているのも納得がいきます。
一方、ナガミヒナゲシの種子の数を数えた人がいないかと、インターネット検索をしていたところ、ナガミヒナゲシを“可憐な花”として種子を集め、「これからどこに播こうかしら?」と書かれているブログを見つけ、かなりショックを受けました。確かにかわいいかもしれませんが、春の風景がナガミヒナゲシ一色になってしまうのではないかと危惧し、あまり増えないでほしいと願っています。

■引用文献
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七(2001)日本帰化植物写真図鑑,全国農村教育協会.


緑生研究所の詳細はコチラ
http://www.ryokusei-ri.co.jp/
緑生研究所は、日本経団連の生物多様性民間参画パートナーシップに参加しています。
担当:宇津木


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