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プラムポックスウイルス(plum pox virus)緊急防除調査を終えて [樹木医・樹木診断]

 平成21年4月、東京都青梅市のウメに、日本では報告のなかった、プラムポックスウイルスによる植物の病気の発生が確認された。これをうけ、農林水産省は全国の自治体に確認照会したところ、東京都では、青梅市、八王子市、あきる野市、日の出町、奥多摩町で本病の発生が確認された。他県では茨城県及び神奈川県で確認されているが、その他44道府県では発生は確認されていない。

 東京都と農林水産省は、被害の蔓延を防止するための措置として、感染の媒介者であるアブラムシの徹底防除と病気の発生範囲を特定するための調査を実施している。

 プラムポックスウイルス(以下PPV)は、アブラムシを媒介とし、ウメ、モモ、スモモなどの核果類の果樹に感染し、葉や果実に斑紋を生じる等の症状を引き起こす植物ウイルスの一種である。果実から感染することは無く、食しても人体には影響がない。

 ウメ、モモなどを生産している樹園地が優先的に防除対象となっていたが、感染状況の把握のため、感染源の周囲1kmの民家に植栽されたウメ、モモ等を対象に採取調査が本年(平成22年)7月に実施された。

 当社は、発生範囲特定のための調査を東京都から受託し八王子地区の調査を担当した。

 調査方法は、調査範囲にある民家を対象にウメ、モモ等が植栽されている箇所を特定したのち、1軒ごと個別訪問して、調査の趣旨説明を行い、対象木の葉を1本あたり5枚程度採取する。採取した葉はクール宅急便でその日のうちに横浜植物防疫所に送るという作業内容である。

 PPVは横浜植物防疫所の防疫官により検査され特定されるため、調査員は、感染したと疑われる葉を現地で確認し採取するのが役目であった。

 今年の7月、8月は特に暑く、採取した葉を入れるクーラーボックスを抱え、約1200戸の個人宅を訪問し葉の採取を行う作業は、相当に辛い作業であった。

 現在、採取された葉からのPPVを特定する検査作業は継続中であり、実際に感染した個体数は公表されていないが、本調査がPPV感染の早期防除の一助になれば幸いである。

PPVに関する公式HP

 http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2009/04/20j48400.htm

 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/keneki/090408.html



P1170457.jpg  シダレウメの病斑


P1170466.jpg  ウメの病斑



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担当:松本

夏の身近な昆虫たち [生き物]

うんざりするほど暑い日が続いています。毎日セミがよく鳴いていますね。
私は千葉県船橋市に住んでいるのですが、
7時過ぎの出勤時にはミンミンゼミの声が多く、アブラゼミの声が少し混じっています。
今朝7時前には、クマゼミの声が聞こえました。
温暖化の影響で分布が北上していると言われているクマゼミですが、
自宅近くで声を聞くのは年間に数日で、その頻度はここ数年変化がないように感じます。

千葉県では生物多様性戦略の一環として、
市民参加による生物調査“生命(いのち)のにぎわい調査団”を運営していて、私も参加しています。
身近な在来種や南方系の種など、57種の生き物が調査対象種となっています。
クマゼミも調査対象種となっているので、先程ホームページから報告を済ませました。

タマムシ.JPG

ナガサキアゲハ.JPG

写真のタマムシとナガサキアゲハは“生命(いのち)のにぎわい調査団”の調査対象種で、
いずれも先日、自宅近くで撮影したものです。
タマムシは、今年改定された東京都のレッドリストに載りましたが、
自宅近くには食樹のエノキが多いせいか、よく姿を見かけます。
ナガサキアゲハは南方系の種類で、最初に自宅近くで見つけたのは2006年ですが、
今では自宅近くで見かける黒いアゲハチョウは、クロアゲハとナガサキアゲハが半々といった感じです。

私の専門は鳥類なのですが、鳥類以外でも身近な生物や話題の生物には関心を向けて、
その動向を実際にこの目で見ていきたいと考えています。

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担当:田中

まもなく展示開始! [仕事]

緑生研究所では、日比谷公園“みどりのiプラザ”でまもなく開催される、
“◆第2回 企画展示 「東京の公園が担う生物多様性」  「世界と地域の生物を支える東京の公園」(平成22年7月27日~平成22年10月30日)”の展示制作を行いました。
http://www.tokyo-park.or.jp/college/green/index.html

この企画展は、「東京の公園が担う生物多様性」をテーマに、東京の様々な公園で行われている、生物保全や自然再生の取り組みを紹介する内容となっています。

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多くの公園や関連団体への現地取材を行い、それをもとにパネルの構成・制作を行いました。そして、本日無事に展示設営を終えました。
情報収集や写真提供にご協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました。
提供いただいたきれいな写真やイラストを多数使用し、小学生の皆さんにも楽しんでもらえるパネルに仕上がったと思います。


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この展示は7月27日から開催されます。日比谷公園や、お近くにおいでの際はご覧いただけると光栄です。
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担当:宇津木

生物多様性をおびやかす特定外来生物-その防除の取り組み [仕事]

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一面の黄色いお花畑。みなさん何の花かお分かりでしょうか?
答えはオオキンケイギクです。
北米原産の多年生草本で、5月~6月にかけて開花します。
花の美しさから、昔は「ワイルドフラワー緑化」等で多用されましたが、
繁殖力が強く、逸出して全国の道路周辺や河川敷等に広がっています。
生態的な影響の大きさから、平成16年に施行された外来生物法に基づいて
平成18年に特定外来生物に指定され、栽培や持ち運び等が原則禁止されました。
違反すると、懲役または罰金に処せられるという厳しいものです。

緑生研究所では、国土交通省国土技術政策総合研究所からの受託により
ここ5年間ほど、河川敷をフィールドとして、オオキンケイギクの防除手法の
調査検討をおこなってきました。
手作業による抜き取り、草刈機による刈り取り、重機による表土のはぎ取りという
異なる管理手法によって、どのような防除効果が得られるかをモニタリングしています。
モニタリング項目は、群落組成、オオキンケイギクの株数やシュート数、実生数、
埋土種子量など、多岐に渡ります。

オオキンケイギク防除の目的は、単にオオキンケイギクを根絶やしにすることではなく、
オオキンケイギクとの競合に敗れ、衰退しつつある在来の河原植物を回復させ、
河原の原風景と本来の生態系を再生することにあると考えています。
実験地では、カワラサイコ、カワラマツバ、カワラヨモギ、カワラナデシコなどの
在来河原植物が生育しており、オオキンケイギクの管理(特に抜き取り)を通じて、
在来河原植物が回復していくことがデータの上でも確かめられています。

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こちらがカワラサイコです。
初夏から夏にかけて、植被がまばらな礫河原の河川敷で
淡い黄色の可憐な花が風に揺れる様子は、とても風情があります。
このような河原の風景を大切にしていきたいものです。

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担当:伊藤

渓流にひっそりと佇むカツラの巨木 [樹木医・樹木診断]

私は、岡山県の山沿いの片田舎で昭和30年代に生まれました。
当時は、自然は身近であり、生活の一部でありました。
四季は農事と密接に係わり、神を讃えるお祭りが子供心をとらえてやみませんでした。
山にあふれる木の実は貧しい食生活の中でのおやつがわりでもありました。
このような子供時代に近所の神社や一里塚に聳え立つ巨樹に圧倒され恐れを抱いたことを覚えています。
今でも巨樹に接するたびに畏敬の念が湧いてきます。

日本で確認されている巨樹・巨木は1998年と2000年に実施された環境省の調査データによると約68,000本とされています。
しかし、いまだ人の目にふれていない巨樹・巨木は多く存在していると思われます。

昨年の8月に栃木県のある渓流を歩いているときに、岩盤に無数の根を張り出し立つカツラの
巨木を見ることができました。
このカツラは複数の幹で構成され、樹高はおよそ20m、根元周囲長は5m前後です。
特に印象に残るのは、岩盤に無数に張り出した根です。
渓流の流れから樹身を守るべく、周囲の岩を抱き込み、幹を支えている姿は感動します。

人が立ち入ることが近年までなかった場所で、カツラはどんな歴史をみてきたのでしょうか。
自然への畏敬の念と恐れを抱き続けることは、多様な自然と共生していく’ひと’としての重要な鍵となるのではないでしょうか。
 
また、どこかで、新しい巨樹と出会えることを楽しみにしている今日この頃です。

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担当 松本竹吾(樹木医)

茅の輪くぐり [季節の話題]

梅雨の晴れ間が続いていますが、6月には各地の神社に茅の輪(ちのわ)が設けられています。緑生研究所から歩いて15分ほどの距離にある布田天神社に、月例祭の25日に訪れたところ、茅の輪が設けられていました。

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茅の輪はその名の通り、茅(チガヤ)を束ねて作られた輪で、この輪をくぐり抜けることによって正月から半年間の罪や穢れを祓い、心身が清らかになることを願うものです。茅の輪の起源は、素盞鳴尊(すさのおのみこと)が旅の途中で出会った蘇民将来(そみんしょうらい)から、「茅の輪を腰につけると疫病から免れられる」と、おしえられたという故事に基づくそうですが、チガヤを始めとする夏草の成長力、生命力にあやかろうという気持ちによるもののようです。

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かつてはチガヤやススキの茂る草地=茅場・萱場は、屋根を葺くのに使う材料などを採取する場として、人々の暮らしに身近なものであったのでしょう。現在の茅の輪は、チガヤの代わりに河川敷などで採取しやすいオギやヨシ、また稲ワラが使われることがあるようです。管理が行われなくなって、チガヤやススキの茂るような草地が全国的に減少し、草地環境に生息する動植物の減少が話題になっていますが、茅の輪をチガヤで作るような風習も、すたれず残ってほしいものです。

なお布田天神社では毎月25日に例大祭が行われ、出店が並び骨董市や神楽の上演も行われています。今「ゲゲゲの女房」で話題の町、調布にお出かけの際には立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

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担当:田中


都市の生物多様性とは? [日々のつぶやき]

先日、国立科学博物館で開催中の生物多様性の企画展を見に行ってきました。

企画展「日本の生物多様性とその保全―生き物たちのバランスの中に生きる―」
(開催期間:5月1日~7月19日)
http://www.kahaku.go.jp/event/2010/05balance/index.html

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世間一般にまだ浸透しているとは言い難い「生物多様性」を説明する上で、
まず導入の「つかみ」をどうするか、日頃悩ましく感じるところです。
そんな職業柄、まず導入部の展示に注目しました。
遺伝子・種・生態系という生物多様性の3つのレベルの説明から入る
オーソドックスなものでしたが、種の多様性の説明として
生き物のフィギュアをコレクション的に並べるなど、
表現に工夫されていました。

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展示の中で個人的に注目したのが、
「都市の生物多様性」というコーナー。
次のような小コーナーで構成されていました。
「今は消えた都心の植物」
「東京都区部から消えた大型蛾類」
「大気汚染と地衣類」
「緑のオアシス・皇居」

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この「都市の生物多様性」という言葉は、
最近よく耳にするように思います。
そこには、時として、生物多様性に対する都市機能の役割を
ポジティブに評価しようというニュアンスを感じることがあります。
(科博の展示にはそのようなニュアンスは感じませんでしたが)
企画展を見ながら感じたのは、「都市の生物多様性」とは、
伝統的な資源利用を通じて培われてきた「里の生物多様性」が
都市化によって劣化した姿に過ぎないのではないか、ということ。

5月に発表された日本版の生物多様性総合評価(JBO)では、
日本の生態系タイプを6つに分類したうちの一つとして、
「都市生態系」が設けられています。
その評価の記述をみると、
「農地や林地などの都市緑地の減少や河川の水質の悪化などにより・・・
過去50年ほどの間に損なわれており、長期的に悪化する傾向で推移」
と結論表記されています。
ここでも、「都市の生態系」とは、「里の生態系」が損なわれた姿という見方が可能です。

「都市性」に対して生物多様性の観点から何か積極的な価値づけができるのだろうか。
そのような価値づけが、昨今の生物多様性ブームの中で求められている側面があるのではないか。
それに答えるには、人と自然との関係性についてパラダイム転換ともいうべき発想の転換が必要ではないか・・・

まだまだ考えていかなくてはいけないようです。

緑生研究所の詳細はコチラ
http://www.ryokusei-ri.co.jp/


担当:伊藤

東京都井の頭自然文化園へ行ってきました [仕事]

緑生研究所計画部では、
日比谷公園緑のiプラザで開催される下記の展示の制作を
行うことになりました。

◆第2回 企画展示 「東京の公園が担う生物多様性」
 「世界と地域の生物を支える東京の公園」
 期間:平成22年7月27日(火)~平成22年10月30日(土)
http://www.tokyo-park.or.jp/college/green/index.html


さて。
今日はその取材に東京都井の頭自然文化園へ行ってきました。
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ino/

井の頭自然文化園は、
身近な生き物を親しみやすく紹介しているのが特徴です。

8/31まで特設展示として、
ワンダーハット~どうぶつのふしぎがいっぱい~
という展示をやっています。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&inst=ino&link_num=14497


この特設展示は、生き物のクイズや触って楽しめる仕掛けが盛りだくさんでした。
是非皆さんも遊びに行ってみてください。

生物多様性を子供に分かりやすく理解してもらうことを考えて
種のかたちや違いを面白く展示したそうですが、
展示の中には”生物多様性”という文字は一つもなく、
しかし、遊びのいろいろなところに生き物の体の仕組みの違いや、
大きさの違いなどが遊びながら感じられるようになっていました。
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担当:宇津木

緑生研究所 計画部ブログをオープンしました [仕事]

株式会社緑生研究所のスタッフが
日々の仕事で考えることや
お勧め情報を不定期に発信したいと思います。

株式会社緑生研究所の詳細はコチラ
http://www.ryokusei-ri.co.jp/
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